脊椎内視鏡戦略統合レポート 2025

外部専門医コンサルテーション総括 | フォルテック株式会社 R&D推進室

統括責任者:成田 渉 (MD, Ph.D)

Executive Summary

2025年9月から11月にかけて実施された一連のコンサルテーション(横浜、蘇州、アユタヤ)において、外部KOL(Key Opinion Leader)との討議を通じて得られた知見を統合しました。今後のR&D、製品開発、および事業展開において、以下の原則が全プロジェクトの共通指針となります。

最優先KPI:「無血野 × 高画質」の絶対的維持

術式(MED、FESS、UBE、AFESS、TSCP)を問わず、安全・確実・再現性の根幹にあるのは「可視性の確保」です。特に、出血やレンズの曇りによる視野喪失からの回復速度(10秒以内)が、臨床現場における最大の評価指標となります。

術式の収斂と共通原理

UBE(単側二孔式)とAFESS(全内視鏡下手術)は、アプローチこそ異なりますが、最終的な到達点(除圧・固定のゴール)は一致します。したがって、術式ごとに個別の機器を開発するのではなく、「視野確保」「止血制御」「アクセス」「熱管理」という共通原理に基づいたプラットフォーム開発を行います。

三位一体の統合ソリューション

単体の機器販売ではなく、以下の3要素を統合したソリューションとして提供します。

  • 中核器械:骨切削効率と熱管理を両立したドリル/シェーバー
  • AI内視鏡PF:危険領域を提示するナビゲーション機能搭載
  • 低侵襲固定具:内視鏡と同一トレイで運用可能なインプラント

One Surgeon Operation

助手やカメラ持ちに依存せず、執刀医1名で完結する「単術者運用」を標準モデルとします。これを実現するための片手操作UI/UX、フットスイッチによるデバイス制御、およびケーブルマネジメントの最適化がR&Dの必須要件です。

映像技術戦略:Stryker 1488 vs 1688

11月8日アユタヤでの討議報告に基づき、Stryker社製カメラシステムの世代間比較と、それを踏まえた当社の映像技術指針を定義します。専門医の臨床体感と技術仕様の相関を分析しました。

構造的考察:見え方の違いが生じる要因

「3Chip(1488)の色分離と陰影の深み」対「シングルCMOS 4K(1688)の鮮鋭感と均質さ」という構造上の違いが、臨床現場での評価に直結しています。

項目 Stryker 1488 (HD 3Chip) Stryker 1688 (4K CMOS)
センサ構成 3-Chip系(プリズム分光)
入射光をR/G/Bに光学分離して各CMOSへ導く。各色が画素全域でサンプリングされるため、色差再現性が高い。
単板 1/2.8" CMOS(ベイヤー配列)
カラーフィルタによる演算再構成(デモザイク)。解像度は高いが、微細な色差が平均化される傾向がある。
臨床体感(メリット) 微小血管(赤~暗赤)の階調識別が容易。
神経・硬膜境界の「奥行き感」や立ち上がりが自然に見える。
ネイティブ4Kによる圧倒的な解像度。
細線がくっきり見え、大画面モニタでの視認性が高い。
臨床体感(課題) 解像度自体はHD止まりであるため、大型モニタでの拡大表示には限界がある。 照り返しが強い術野ではハイライト寄りにバランスしやすく、微細な陰影が飛びやすい場合がある。
光源システム L9000 LED
1488ヘッドからの制御に最適化。低出力運用での安全性に定評。
L11 AutoLight
RGB LED制御により光量追従性が向上。4K表示との親和性が高い。

実務への推奨設定と運用指針

専門医との協議により、以下の設定を初期推奨値として策定しました。特に「白飛び防止」と「色温度管理」が重要です。

検証計画 (KPI設計)

推測のみで終わらせず、以下のKPIを用いて定量的な検証を実施します。

UBE / AFESS 技術詳細と機器要件

横浜(10/18)およびアユタヤ(11/7)での専門医コンサルテーションから導き出された、臨床現場が真に求める技術仕様の詳細です。

1. 視野確保と流体設計 (Fluid Dynamics)

「視野喪失から10秒以内の回復」を実現するために、以下の技術要素を実装します。

2. アクセスと骨切削 (Access & Resection)

狭小な術野における安全性と効率性を両立させるためのハードウェア要件です。

3. 先進技術統合 (AI & Navigation)

術者の認知負荷を軽減し、合併症リスクを低減するためのデジタル支援技術です。

4. TSCP(柔軟内視鏡)の位置づけと課題

TSCP(Trans-Sacral Canalplasty)は、その特殊性から以下の戦略的位置づけとなります。

TSCP戦略の要諦

強み:脊柱管内から椎間孔、さらに孔外へと連続的に到達できる可動域。新病態の発見や治療に繋がる可能性がある。
課題:消耗品コストが高い(約20万円/件)。普及には「病院収入≧40万円/件」を成立させる経済モデルが必須。
適応戦略:「癒着剥離一点突破」など、小径スコープの利点が最大限に活きる病態に絞り込み、経済合理性と臨床価値を両立させる。

SWJ2026 教育・企画構想

2026年開催予定のSWJ(Spine Week Japan)に向けたプログラム設計案です。幕張メッセでの協議内容を反映し、形式的な術式論争ではなく「原理原則」に立ち返った教育機会を提供します。

プログラム構成案

Day 1: 原理・到達点・エコノミクス

  • 基調講演:術式横断にみる「無血野×高画質」の科学と安全域。
  • 特別講演:UBE×AFESS収斂仮説 — 到達点の定義と共通言語化。
  • ケースレビュー:視野喪失からの回復作法、骨切削時の熱管理失敗事例の研究。
  • エコノミクス・パネル:病院経営視点での内視鏡手術。「病院収入≧40万円/件」を実現するための条件、消耗費圧縮、償還の道筋についての討論。

Day 2: 実践・ハンズオン・新技術

  • TSCP特別セッション:画質ベンチマーク、可到達デモ、単術者UI/UXの実演。適応・除外ツリーの公開。
  • トラック別ハンズオン:
    • UBE:二孔角度設定と熱管理の実践。
    • AFESS:孔内→孔外の安全展開。
    • 基本コース:視野・止血・アクセスの原理習得。

ハンズオン評価KPI(定量評価指標)

参加者の習熟度を客観的に評価するため、以下のKPIを導入し、事前後テストで教育効果を測定します。

運営・R&Dへの提言

成功に向けた準備として、単術者UI/UXの実演機材(片手操作デバイス、フットスイッチ等)を事前整備します。また、ハンズオン中の送水・吸引・照明データをロギングし、教育効果の分析に活用します。

中国・ASEAN 市場戦略

蘇州およびアユタヤでの現地調査レポートに基づく、グローバル展開のロードマップと具体的施策です。

中国市場 蘇州レポートより:VBPと規制への対応

中国市場は、症例数の多さとデジタル実装の速さが魅力ですが、VBP(集中購買)による価格圧力と規制対応が課題です。

規制戦略:革新機器ルートとRWD

NMPAの「革新医療機器特別審査」ルートを目指します。そのために、海南・博鰲(Boao Lecheng)特区での先行導入を行い、そこでの実臨床データ(RWD: Real-World Data)を収集して審査のエビデンスとして活用します。また、UDI(機器固有識別子)の段階実装と院内トレーサビリティへの対応も必須です。

価格戦略:TCOと製品ラインナップ

VBPによる消耗材価格の大幅圧縮(50%以上減)に耐えるため、製品ラインをA/B/C(高機能・標準・経済)の3層に分けます。単なる値下げ競争ではなく、トレーニングや保守を含めたTCO(総保有コスト)の最適化を病院側に提案します。

データセキュリティ

PIPL(個人情報保護法)やデータ越境規制に対応するため、クラウド/AI連携機器は中国国内サーバーでのデータ保管と匿名化処理を前提に設計します。

ASEAN市場 タイ・アユタヤレポートより:実地教育と経済性

ThaiSMISSTなどの学会と連携し、現地のKOLネットワークを強化します。

グローバル進出ロードマップ (12-24ヶ月)